広報紙「ほっかいどう」

特集

次世代半導体を北海道から世界へ

掲載号:2025年3月号

持続可能な北海道観光の実現に向けて
建設中のRapidus株式会社の工場    提供: Rapidus

次世代半導体の量産製造をめざすRapidus株式会社(以下、ラピダス社)が、千歳市への製造拠点立地を表明してからもうすぐ2年。
ラピダス社の立地を契機として、道内では、さまざまな取り組みが進められています。

次世代半導体の必要性

半導体は、スマートフォンやパソコン、自動車、家電などあらゆる電子機器に入っている部品です。情報の記憶、数値計算、論理演算などの知的な情報処理により、電子機器の頭脳部分として中心的な役割を果たしています。

半導体はさまざまなものに使われています。

今後、生成AIの拡大などによって、データ通信量や電力の大幅な増加が見込まれる中、高性能で低消費電力の次世代半導体は、日本のカーボンニュートラルの実現に貢献するとともに、経済安全保障の鍵となる重要な中核技術です。

次世代半導体

ラピダス社が量産製造を目指す次世代半導体

回路線幅2ナノメートル※1世代のロジック半導体※2
※1 2ナノメートル=10億分の2メートル(髪の毛の約5万分の1)
※2 スマートフォンやパソコンなど電子機器の「頭脳」

電子回路の幅(回路線幅)を狭くして、微細な部品をより多く配置することで従来の半導体(7ナノメートル世代)よりも、性能効率が45%向上、消費電力も75%削減できるとされています。

下向き矢印

AI、自動運転、5G、データセンターなどさまざまな分野での利用が見込まれます。

次世代半導体プロジェクト

プロジェクトの進捗状況

ラピダス社の次世代半導体製造拠点は、令和5年9月から本格的な建設工事が始まっており、令和7年春からの製造試作ライン(パイロットライン)の稼働、令和9年からの量産開始に向けて、プロジェクトはスケジュールどおりに進捗しています。

新税による施策イメージ

EUV露光装置

先端半導体の製造に欠かせない装置「EUV露光装置」が、令和6年12月、ラピダス社の次世代半導体製造拠点に搬入されました。特殊な光で非常に細かい回路を焼き付ける装置で、導入は日本初となります。

EUV露光装置

関連するインフラ整備など

道では、千歳市や関係機関等と連携・協力し、次世代半導体の製造拠点の整備に必要な用水施設・周辺道路といったインフラ整備を進めています。また、製造拠点の稼働に向けて、排水先となる千歳川のPFAS調査を行っています。
※有機フッ素化合物

ラピダス社のプロジェクトの成功に向けて、同社のエンジニアたちがアメリカ・ニューヨーク州で次世代半導体の量産技術の確立に向けて研究を進めています。北海道への想いを持ったエンジニアの声をご紹介します。

出身地である北海道に貢献したい、半導体を通じて社会に貢献したいという気持ちが強く、ラピダスに転職しました。北海道で次世代半導体の量産に向けて、力を尽くしていきたいと思います。

松本 悟さん
まつもと さとるさん

北海道の美しい自然にあこがれて、何回も訪れています。ラピダスの仕事は、国にとって重要な意味を持つということを理解した上で、エンジニアたちと一丸となって、研究開発にまい進しています。

岩谷 晶子さん
岩谷いわや 晶子あきこさん

道の主な取り組み

道では、ラピダス社の立地という好機を最大限に生かし、半導体の製造、研究、人材育成等が一体となった複合拠点を実現するとともに、再生可能エネルギーなど本道の強みである産業振興と合わせて、本道経済全体の成長に結びつけていくため、オール北海道で目指すべき指針となる 「北海道半導体・デジタル関連産業振興ビジョン」を令和6年3月に策定し、さまざまな取り組みを進めています。

半導体関連産業の集積

ビジネスマッチングセミナーの開催

道内企業の半導体関連産業への参入促進・取引拡大につなげることを目的に、「半導体関連産業参入促進セミナー」を開催しています。

展示会への出展

セミコンジャパン、セミコン台湾など道外・海外で開催される半導体の国際展示会に出展し、 道の立地環境の優位性などをPRしています。

展示会の様子
展示会の様子(セミコン台湾)

イノベーションの創出・人材育成

アメリカ・ニューヨーク州との連携

令和6年8月、産学官連携による半導体の研究開発の先進地であるニューヨークを訪問し、ニューヨーク州経済開発公社及びニューヨーク・クリエイツとの三者で覚書(MOU)を締結し、半導体の研究開発や人材育成等での連携に関する枠組みを構築しました。

覚書締結の様子
ニューヨーク州経済開発公社及びニューヨーク・クリエイツとの覚書締結の様子

高校生向け出前講座・小中学生向け体験教室の開催

大学・高専から講師を招き、半導体を中心とした理系分野における若年層の関心向上などを目的に、高校生向け出前講座や、小中学生向け体験教室を行っています。

 体験教室の様子
体験教室の様子

地域経済の活性化

産学官によるネットワークの構築・強化

道内の大学や高専、半導体・デジタル関連企業などと連携し、道内企業の半導体関連産業への参入促進、産学官連携による地域経済の活性化に取り組んでいます。

「地方大学・地域産業創生交付金(内閣府)」の採択について

道では、次世代半導体をトリガーとして半導体の複合拠点を実現し、地域経済の活性化につなげるため、札幌市・千歳市と共同で「地方大学・地域産業創生交付金(内閣府)」の申請を行い、採択されました。
この事業では、北海道大学と公立千歳科学技術大学の持つリソースを活用することで、道内の半導体人材の育成体制を強化し、半導体企業と共同で先端研究を進めるとともに、半導体エコシステム構築に向けた産学官によるネットワークの構築・強化などを行うこととしており、今後、道及び両市において、関連する予算案を議会に提案していく予定です。

GX産業の集積に向けて

さまざまなプロジェクトが進む北海道

北海道では、ラピダス社の次世代半導体プロジェクトのほか、大規模データセンターの立地や、 北海道と本州を結ぶ海底直流送電の整備など、今までになかった投資規模のプロジェクトが進んでいます。

GX2040ビジョン

GXを推進するための新たな国家戦略である「GX2040ビジョン」(案)では、再生可能エネルギー(以下、再エネ)が豊富な地域への産業集積の加速が盛り込まれ、国内随一の再エネのポテンシャルを有する北海道が、GX産業の適地として国内外から一層注目されようとしています。

GX産業の集積に向けて

道では、道内各地の多様な再エネのポテンシャルを活用し、国内外から投資を呼び込み、再エネ供給拠点のみならず、再エネの利活用拠点として、全道域でのGX産業の集積や地域振興を図っていきます。

※GX(グリーントランスフォーメーション)とは、脱炭素社会への変革と経済成長を同時に実現させるための活動のことです。
※環境省が運営する「REPOS(再生可能エネルギー情報提供システム)」の潜在的な導入量(導入ポテンシャル)の推計によると、都道府県別で風力発電、太陽光発電、中小水力発電では北海道が1位、地熱発電では2位となっています。

再生可能エネルギー

特集に関するお問い合わせ

道庁次世代半導体戦略室

TEL.011-206-6189