広報紙「ほっかいどう」

特集

わが国のGXをリードする北海道

掲載号:2024年9月号

北海道の再生可能エネルギー(再エネ)の潜在力は国内随一。北海道ではGXに関するさまざまな取組が始まっています。

1 GX(グリーントランスフォーメーション)とは何か?

地球温暖化が進む今、二酸化炭素(CO₂)をはじめとした温室効果ガスの削減は社会的な課題となっています。GXとは、石油などの化石エネルギー中心の産業・社会構造から、CO₂を排出しないクリーンエネルギー中心の社会構造へと変革させるとともに、この社会構造の変革を経済成長の機会と捉え、脱炭素社会への変革と経済成長を同時に実現させるための活動のことです。GXの取り組みを道内各地に広げ、経済と環境が好循環する持続可能な地域社会を構築するとともに、北海道の豊かさや道民の皆さまの暮らしやすさの向上につなげていきます。

北海道の再生可能エネルギーの潜在力

■北海道の再生可能エネルギーの潜在力

環境省が運営する「REPOS(再生可能エネルギー情報提供システム)」の潜在的な導入量(導入ボテンシャル)の推計によると、都道府県別で風力発電、太陽光発電、中小水力発電では北海道が1位、地熱発電では2位となっています。北海道では、畜産バイオマスや木質バイオマスを含め、地域の資源を生かしたさまざまな再生可能エネルギーの導入が進められているところですが、洋上風力をはじめ地域との共生を前提として、さらに導入できる可能性があります。

発電関連産業

2 北海道のGXをけん引する8つのプロジェクト

北海道では「GXをけん引する8つのプロジェクト」をはじめとした、GXに関するさまざまな取り組みが始まっています。

GXをけん引する8つのプロジェクト」をはじめとした、GXに関するさまざまな取り組みが始まっています。

■再エネ電力を作る

❶洋上風力発電
風車を海上に設置して発電するもので、陸上と比べて風況の良い場所が多いことに加え、大量の電力を発電することが可能となります。このため、再エネ拡大の切り札といわれています。

次世代半導体地図

◎洋上風力発電関連産業
発電設備の部品点数は約2万点とすそ野が広く、調査・開発から建設、メンテナンスといった幅広い分野にわたり需要が期待されています。

■再エネ電力を使う

❷次世代半導体
半導体とは、スマートフォンやパソコン、AIなどの分野でさまざまな製品に使用される基幹部品であり、産業に必要不可欠な「産業のコメ」ともいわれています。道内では、エネルギー効率が高く高性能な次世代半導体の量産製造を目指すRapidus株式会社の拠点整備や関連産業の集積の動きが見られます。

❸データセンター
データセンターは、デジタル社会のインフラであり、全てのインターネットサービスはデータセンターを経由して提供されるなど、生活に欠かせない施設です。国では北海道を東京・大阪圏を補完・代替するデジタルインフラ整備の中核拠点に位置づけており、本道の冷涼な気候や豊富な再エネを活用したデータセンターの立地が進んでいます。

◎国際海底通信ケーブル
北極海を経由してアジアと欧州を結ぶ海底通信ケーブルの敷設が検討されており、道では、欧米との地理的近接性を生かし、国際海底通信ケーブルの本道への陸揚げの誘致に向けた取り組みを実施しています。

■再エネ電力をためる

❹水素
エネルギーとして使用される水素は、酸素と結びつけて発電するほか、燃焼させて熱エネルギーとして使用します。水素は、水を電気分解して製造するほか、さまざまな資源から作り出せることや、使用時にCO₂が発生しないことから、次世代エネルギーとして注目されています。

◎商用化の事例 株式会社しかおい水素ファーム
株式会社しかおい水素ファームでは、国内で唯一、家畜ふん尿由来のバイオマスから水素を製造しています。乳牛1頭が1年間に出すふんから燃料電池自動車(FCEV)が10,000km走れる量の水素を製造することが可能です。

➎SAF(Sustainable Aviation Fuel)
廃食油や廃棄物などを原料として生成される持続可能な航空燃料であり、従来の燃料と比べ、6~8割ほどのCO₂を削減できます。国では、令和12年(2030年)までに国内航空会社が使用する燃料の10%をSAFに置き換える目標を設定しており、将来的には、CO₂と水素から合成されるSAFの利用拡大が見込まれています。

❻蓄電池
電気エネルギーを蓄えておき、必要なときに電気エネルギーに戻して使うもので、発電の需給調整などに活用されています。道内では、豊富町に風力発電の出力調整用として世界最大規模の蓄電池が設置されています。

■再エネ電力を運ぶ

❼海底直流送電
主に通内の再エネ電力を、海底の送電ケーブルを通じて、関東などの大消費地に送るもので、日本海ルートの200万kWについては、令和12年度(2030年度)を目指して整備が進められています。

❽電気及び水素運搬船
再エネ電力や再エネ電力で作った水素を消費地へ運搬するもので、道内では、株式会社パワーエックスが室蘭市や苫小牧港管理組合と連携し、電気運搬船の活用に向けた取り組みを進めています。

3 特区を活用したGXの推進

■GX・金融コンソーシアム

「Team Sapporo-Hokkaido」(チーム札幌・北海道)

Team Sapporo-Hokkaidoは、日本の再生可能エネルギー供給基地や、GXに関する資金・人材・情報が集積するアジア・世界の「金融センター」を実現することを目的に、令和5年(2023年)6月に北海道や札幌市をはじめとした産学官金の21機関で設立しました。国が今後10年で実行するとしている150兆円ともいわれるGXに関する官民投資のうち約40兆円を北海道・札幌に呼び込むべく、GX関連産業の集積と、それを支える金融機能の強化集積を進めるため、規制緩和の検討や、環境金融入材・GX人材の育成、国内外への情報発信などに取り組んでいます。

■北海道・札幌「GX金融・資産運用特区」

Team Sapporo-Hokkaidoの取り組みを加速させるため、北海道と札幌市は共同で「北海道・札幌「GX金融・資産運用特区』」を提案し、令和6年(2024年)6月に金融・資産運用特区の対象地域として決定されました。

◎特区の主な内容

■国家戦略特区

国家戦略特区制度は、成長戦略の実現に必要な、大胆な規制・制度改革を実行し、「世界で一番ビジネスがしやすい環境」を創出することを目的に創設されました。令和6年(2024年)6月に北海道は新たに国家戦略特区に指定され、これにより、創業、外国人材、観光、雇用など幅広い分野の規制改革メニューを活用するとともに、新しい規制改革の提案を行いながら、さまざまな取り組みを進めていきます。北海道では、GXや金融に限ることなく、より一層ビジネスがしやすい環境を整えるため、新しい規制改革のアイデアを募集しています。

◎アイデア募集
北海道では、GXや金融に限ることなく、より一層ビジネスがしやすい環境を整えるため、新しい規制改革のアイデアを募集しています。皆さまがお気づきのことや、規制改革のアイデアがありましたら、ぜひご意見をお聞かせください。
https://www.pref.hokkaido.lg.jp/kz/zcg/GX_Special_Zone_teian.html

道では、これらの取り組みを通じて、経済と環境が好循環する持続可能な地域社会を構築していきます。

道庁ゼロカーボン産業課

TEL.011-206-9094